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公共工事のあり方を考える、叡智学園見学会レポート

/ 19.08.05
建築

7月27日 建築士会の新規入会者向けの見学会で、大崎上島の「広島県立広島叡智学園 中学校・高等学校」に行ってまいりましたのでレポートです。なかなか考えさせられる内容でした。

現場まで

場所はこちら、瀬戸内海の島です。
橋もかかっていませんが、母親の里でもあるので全く冒険感がない、見慣れた風景。

現場最寄りの大西港へは安芸津港から渡ります。

中電の火力発電所
フェリー

最寄りの大西港から3km程、バスに揺られて現場へ到着です。

駐車場

どこが正面玄関かってのはわかりにくい感じです。
アーチ状の回廊を通って管理棟へ向かいます。

今どきなサイン

概要

広島県発注の新しい中高一貫校です。
中学は1クラス20人ずつ(少な!)の2クラス×3学年。
高校は1クラス30人ずつの2クラス×3学年。
全校生徒は300 人になる予定。

工期は1~3期に分かれており、今年(2019年)の春で1期工事が完了。
4月に1期生の中学生が男女20人ずつ計40名入学し、寮生活をしながら勉学に励んでいます。今はちょうど夏休みで全員が帰省中だそうです。
工事の方は引き続き2期工事の真っ只中で2020年の春までに特別教室棟と体育館が完成します。
3期工事は1年おいて2021年から残りの寮等が完成します。

奥の会議室で設計のシーラカンス&アソシエイツと土井一秀建築設計事務所、そして学校側からの説明を受け、各エリアへと進んでいきます。

上は概念図、下は配置図。

各エリア

フリーアドレス式の職員室
オカムラの最新什器で統一されています

職員室等が集まる管理棟は木造平屋建てです。
木構造が表しになっており、壁もCLTのスライスのような合板や、普通の合板をそのまま表しにしています。

上は一番大きい「みかん広場」です。非常に気持ちいい。
タイル貼りの池もあります。

RCのアーチが続く回廊は学びの回廊、囲まれた広場は学びの広場となります。

アーチ状の部分はテーパーが付いています。外側の角には面木も入っている模様。相当面倒だったんだろうなというお仕事。

回廊の屋上へ上がって見下ろすと、先程の管理棟はシート防水仕上げでした。驚くほど緩勾配。
一方飛び出している三角はトップライトになっています。

回廊の雨水は竪樋なしのガーゴイル。下は砂利敷だけだけど・・・。

教室棟へ向かいます。こちらも木造平屋建て。
外壁は焼き杉の上にクリア塗装がしております。

こちらは各教室をつなぐ図書コーナー。明るく開放的。

各教室は部屋に分けられていません。

角の柱はオフセットして配置。
大型の木サッシが引き込まれています。

全ての教室にホワイトボードと最新の短焦点プロジェクターが設置されています。

食堂等へ向かいます。
この廊下の庇、CLTのでっかいパネルをH鋼で挟んであるみたい。

食堂等は基本的にRC造です。
食堂(カフェトリウム)は黒い塗装の梁と天井で急に落ち着いたイメージ。
横に音楽ステージが併設されています。

カフェテリアの方は明るいイメージになっています。

カフェテリアには和室が併設されています。

その奥に家庭科室(↑裁縫等)と調理教室(↓)

寮の方へ進んでいきます。

こちら側は在来の木造で、土井さんの設計になります。
黒い部分の外壁は焼き杉無塗装。

管理棟を抜けるとコテージのような寮が木庇の廊下で緩やかに繋がります。

複数戸が庭に面してユニットを形成しています。

工事中の現場も見せて頂きました。
こちらは特別教室になる棟。皆さん接合金物に夢中。

感想

広い敷地を十分に生かしたゆとりある配置計画。
当日はよく晴れていたこともあり非常に気持のいい空間が広がっています。

ただ、これは県立の公立学校なんですよね。
自分自身も税金納めてる以上(微々たるもんだけど)ちょっとお金かけ過ぎなような気がします。

もちろん教育に予算を割くことと、子供達にいい環境で勉強させることには大賛成なんですが。学校として本当に良い建物なのかはちょっと怪しいかもしれません。

まず木造の校舎ですが、お金のかかる集成材に県産材は使われていません。
(在来の寮棟では使用されているようですが。)
なので地域で余っている木材の利用及び循環、林業の活性化にはあまり役に立っていません。今どきな設計をやってみたかっただけと言う雰囲気が感じられます。また、100年、200年と長持ちするしっかりとした設計にもなっていません。外壁に表しの木壁はあっという間に風化していくでしょう。薄い軒、庇は台風で持つかどうかも伺わしいところ。基本的に穏やかな気候ではあるんですが、たまには台風も来ますよ。海はすぐそこだし。(塩も舞う)

また分棟形式は非常に気持ちいですが、外壁・サッシがすごく増えるので同じ床面積でもものすごく予算が増加します。RC造の回廊もアーチがきれいですが、非常に手間も予算もかかって用途としては只の渡り廊下なんですよね。(う~ん)そして分棟としたことで、セキュリティが非常に悪いです。島にそんな人はいないとは思いますが、目的を持って島に渡ってくる人もいるかも知れないわけですよね。そこに小学校をこの間出たばっかりの子たちも含めて寮生活をしているわけです。 大学ぐらいだったらいいかもしれませんが。
一方寮の方は寮母さんのいる管理棟が中心にあるものの、庭を回ればそれぞれの棟は行き来し放題です。最終的には高校3年生までいるわけですから、校内のセキュリティも男女問わずそれでいいの?って感じです。

もちろん根本的には、全く新しい教育システムを模索し挑戦することは非常に賛同します。良いも悪いも開校してスタート切っちゃった訳ですから、ここで働く先生方や生徒達に頑張って欲しいところ。建築的には10年ぐらいしたら大規模な点検と改修が必要になるかもしれませんが、それまでに進学校としての地位に育つかどうか。やたら偏差値高くなっても、広島県に帰ってきて就職してくれないと意味ないんでしょうけど・・・。

一番問題なのは最悪廃校になった場合、再利用する需要があるかといわれば100%ないんですよね、この島。
色々と考えさせらる見学会でした。

KITAMULABO建築 / 19.08.05 /