レーザー加工機のノウハウ

2021.8.21

今年もレーザー加工機を使用する機会がありましたので、マニュアルには載ってないノウハウをまとめてみました。使用するレーザー加工機はカインズ広島LECT店においてあるTrotec Speedy300(CO2 60W)です。

Trotec Speedy300

データの作り方

まずはデータの作り方からです。実はこれ超重要。TrotecのSpeedyシリーズはイラストレータから印刷をかけます。なのでイラストデータに送れる線データであれば何でもいいのですが、CADのDXFデータを読み込んだだけでは最適ではなくイラストレータ内でデータの加工・調整が必要です。

ちなみにカインズでレンタルする場合は、データ調整もレンタル時間に含まれるので、あらかじめイラストレータでデータを最適化しておいたほうがいいです。カインズのレーザー加工機のレンタル料金は5000円/時間なので、持ってない方は1ヶ月だけでもイラストレータ買ったほうがお得です。

CADでのデータ作成

イラストレータは操作に不慣れなため、設計は一番手慣れているjw_cadで行います。2次元CADであればAutoCADでもいいと思います。jw_cadではレイヤーとそれらをまとめるレイヤーグループという概念がありますが、この時、一度に加工する範囲をレイヤーグループにまとめ、線の色ごとにレイヤー分けしておきます。また必ず加工する材料の原板の四角を書いておき、加工データの配置も検討しておきます。必要であれば材料浮かせる脚の位置も記入しておきます。

線色の整理

イラストレータでDXFファイルを読み込みますが、線の色情報がうまく受け渡せません。なので、色ごとに分けたレイヤーをオンオフしながら色を再設定していきます。色分けができたらレイヤーは1度の加工分で1つにまとめておきます。先の太さも加工用に変える必要がありますが、細すぎると画面で見えづらいので最後にまとめて変換します。

パスの結合

ここが一番重要です。jw_cadから読み込んだままでは四角とか多角形は1辺ごとに全てバラバラの線になっています。このままレーザー加工に読み込むと、一繋ぎの線として認識されず、辺ごとにカットされます。そうなると角が点として残り、切り抜けていない状態になります。また、ヘッドがあっちこっち無駄な動きをすることになるので、加工時間も増えてしまいます。なので、イラストレータ内で連続した線につなげておきます。

※AutoCADの場合はポリラインを使えば、dwg、dxf形式とも連続線として読み込めるようです。

線の選択はドラックで範囲選択か、Shiftキーを押しながらクリックで個別選択±です。

パスの結合は線を選択した状態で メニュー>オブジェクト>パス>連結をクリック、もしくはショートカットCtrl+J(ジョイント)です。

閉じた線はレーザー加工機にかけるとどこかの点(アンカー)から切りはじめ、その点に戻ってきます。この開始点の断面には必ず線が入ります。明確な角だと気になりませんが、「丸く面取りした直線と円のつなぎ目」とかも同じ扱いになるので、表に見えるところを避けて指定したいという場合があると思います。その場合には閉じたパス(線)の1点だけを連結解除します。(座標は同じですがアルファベットの「C」になってるイメージ。)そうするとその点がカットの開始&終点になります。

ダイレクト選択ツールでアンカー(角)をクリック>選択したアンカーポイントでパスをカット をクリックでOKです。

最後にもう一つ注意点ですが、エアホールなどの繰り返しパターンが有る場合、一つのパターンをパス連結してその後コピペしていくと思います。このときの連続複写でパターンがかぶらないように注意する必要があります。イラストレーターは後で重複データを整理するようなコマンドがないからです。レーザー加工機にかけてから、あれ?二重でカットしてる、ってなります。仕上がりにも影響が出ますし、時間も無駄になります。

アクリル素材について

今回加工したのはアクリル板です。アクリルはレーザ加工と相性がいい素材ですが、注意点がいくつかあります。

アクリルにはキャスト材と押出材の2種類があります。押出材の方が安価で柔らかいので加工もしやすいのですが、一方で少し熱にも弱いので、キャスト材のほうがレーザー加工には適しています。厚みのあるものや、カラーバリエーションもキャスト材の方が多いです。ただ、値段の以外にキャスト材にもデメリットがあり、厚みのばらつきが押出材よりも大きいということです。

よく材料を購入するはざいやさんの解説ページによると、板厚許容交差は3mm厚では±0.5mm、5mm厚では±0.6mmだそうです。ということは3mmだっつってんのに最大で1mmの差まで出るよってことです。もちろんアクリルのメーカーにもよると思いますが、これがなかなか曲者で、3mm厚300mm×450mmのキャスト板の4角をノギスで測ってみると、たしかに0.2mmとか0.3mm厚みが違いました。なのでパラメータにある程度の余裕が必要です。また、テストする板はその板の中でも厚みのあるところで、本番データでは板厚をノギスで測ってからパラメータを決めるようにしましょう。

材料テストのやり方

あらかじめテスト用のデータを作っておきます。Trotecの場合、読み込める線色は16色です。パラメータは主にPowerとSpeedの出力のバランス調整になってくるので、その数パターンを一度に試せるようなデータを作ってみました。同じ形を4×4色配置しています。これぐらいかなと思うパラメータを中心にちょっとずつパラメータを変えながら16パターンテストしてみます。材料の厚みや室温、加工機の調子によって丁度いいパラメータを探ります。

こんなデータ 1つが10mm角
3mm クリアアクリル(キャスト材)

出力を色々変えながらテストしてみました。その場でわかりやすいように直接マジックで結果を記入しています。

横4列がPowerで縦4行がSpeed設定になります。他、Passは1回、エアーアシストは全てON、Zオフセットは0です。Zオフセットは5mmより厚い板をカットする際に、焦点位置を変えるといいらしいのですが、まだ使ったことはありません。もしかして、厚みの違う材料を同時カットしようと思ったら、Zオフセットで高さを変えるというやり方もありなのかもしれません。

PPIは押出材だと1000Hzとされていますが、キャスト材はより硬いので5000Hz以上とTrotecのHPには書かれています。確かに1000Hzではだめで10000Hzにすると切れるようになった経験がありますが、5000Hzと10000Hzと20000Hzで比べたところ結果は同じでした。あまり難しく考えず、今回も10000Hzでいくことにしました。

また、アクリル板表面の保護紙は両面とも剥いでいます。今回はカットも細かくなるので本番でも両面無しです。保護紙の接着が弱ければそのままでいいかもしれませんが、裏面は最悪の場合火がつくので、あまりおすすめしません。保護紙付きの場合はその分出力を上げる必要があります。

白や透明など一般的な材料で練習したら(一番安い)、本番で使う材料でもテストします。実際の製造メーカー、色、透明度、仕上げによってもパラメータ変わってくるので重要です。この時、板厚はノギスで四角を正確に測っておきます。結構ばらつきがあるのがおわかりでしょうか。薄い方で合わせちゃうと本番で悲惨な目に会います。

切断面をきれいにするためには?

5mm厚のクリア材で断面をどこまできれいに行けるか試してみました。普通に切ると細かい線のような模様が入るのですが、できるだけゆっくり切るようにするとなめらかに行けました。左の写真では下に行くほどなめらかです。

ただここまでいくとかなり遅くなるので、その分加工時間もかかってしまいます。スピードを優先するか、仕上がりを優先するかで設定が変わってくるようです。今回はレンタル料金に負けてスピード優先設定としました。※あとになって考えると、この厚みのこの線だけ仕上がり重視のゆっくりカット、っていうのもありだったのかもしれません。

最適なパラメータ?

最終的に以下のような出力で行いました。これで全てキレイに切りぬけています。

種類最大厚仕上プロセスPowerSpeedPPI/HzPassesAir assistZ-Offset保護紙
キャスト3mm3.2mm片面マットパステルカット800.50100001ON0両面なし
キャスト5mm5.0mm片面マット乳白カット550.15100001ON0両面なし
スピード重視設定

※条件は室温や機械の調子、バキュームの仕方によっても違うので、あくまでも参考としてください。

材料の支持方法

カインズの加工機では一番汎用性のあるハニカムテーブルがセットされています。このテーブルの上にそのままアクリル板をおいてカットすると、突き抜けたレーザーとハニカム部分の交点でアクリル板を痛めてしまいます。完全に表面しか見えない状況だと問題ありませんが、クリア素材等になるとそうも行きません。対策を考えてみました。

テーブルを変える方法

TrotecのHPをみてたら、いろんなテーブルのオプションがあり、その中に「アクリル カッティング グリッド」という100mm以下のアクリルカットに最適というテーブルがありました。

サイト内の動画を見ても傷がついてない様子。こんな形状でいいものないかなと探してたら、ありました。

ABC商会のスーパーハイライト Sという商品

建築の天井とかに使う、樹脂製の格子ルーバーです。PS製なのでレーザーも対応可能。25mm角と15mm角のものがありますが、おそらくTrotecの純正品は15mm角です。

今回はYahooショッピング内 e-金物さんで購入しました。購入ページはこちら

サイズカットと送料合わせて¥8500でした。Speedy300のテーブルサイズに合わせて724mmx430mmでオーダーしています。

実際にセットした様子

レーザー加工機はハニカムテーブルの上に置きました。実際にカットしてみると・・・

燃えませんでした!アクリルよりも弱いようで、一緒に溶けるように切れています。材料外すと切り抜いたパーツがくっついていました。乳白のルーバーは溶けると透明になって広がるようで、少し材料を汚していました。小口の方は言われなければわからない程度。裏側の仕上がりを求めないものであれば、ハニカムテーブルよりも使えそうです!

裏面の付着物

余計に熱を加えたところでこれぐらいの付着物

失敗例

形状だけみて使えるかもと思って買ってみた猫よけシート。何より安い!PET素材でレーザーには使えるけど・・・

正確に浮かせる方法

クオリティを求めるならやはり材料を浮かせるしかないようです。カットラインと絶対にかぶらないように正確に支持する方法を考えました。しかも材料が無題にならないようにできるだけ最小限の面積で。

ということで、こういうものを用意してみました。冷蔵庫やホワイトボードにメモを貼るようなマグネットです。

ベースが10mmで高さ15mm、頭は約4mmΦでした。丁度いい形状。あと模造紙とか大きい紙を使います。

あらかじめ10mmの円を図面上に記入しておきます。この円はカットラインにかぶっても大丈夫です。中心4mmΦにちょっと余裕があればOK。細かい切り抜き部分は無視していいですが、パーツとして残る部分と、外側の余白部分は加工中に落ちないような配置とします。イラストレータではカットラインと同じレイヤーに違う線色で設定し、一緒にCAMへ送ります。

加工機ではハニカムテーブルを外してフラットテーブルにします。(ハニカムテーブルは乗っかってるだけです。)

模造紙をフラットテーブルに固定します。ヘッドが動く範囲内はマスキングテープ等で貼り付けます。ヘッドの動きをかわせる、背の低いマグネットがあればそれでもいいです。

  1. 丸い線だけをカット
  2. 切り抜いた丸を除去(エアーダスターで吹くと速いです)
  3. 丸い切り抜き部分の中心にマグネットを貼り付け
  4. 模造紙をどける

これで絶対にカットラインにかぶらない完璧なテーブルの完成です。あとは材料をピンの上に置いて、本番の線をカットしいきます。

この時注意しないといけないのが、この模造紙ガイドのカット時と本番カットラインのデータ、及び材料位置をできるだけ揃えないといけないということです。その際、データにはカットする材料の枠線があるとかなり合わせやすいです。模造紙はガイドのものさしの原点に模造紙とヘッドとデータを揃え、その後、アクリル板を載せた際も同じ位置に合わせます。この時は材料がものさしから浮いている状態なのですが、あらかじめ加工機の内側の板からの距離を測って置けば、特別な治具がなくてもかなり正確に揃えることができます。

材料とデータの位置を正確に合わせられれば、材料とレーザー加工機の加工範囲を無駄なく使うことができます。今回は材料の端で最短5mm、パーツ同士の間で最短2mmのクリアランスでもきれいに抜くことができました!

まとめ

レーザー加工機のようなデジタル加工機は、データを送れば自動的に加工してくれる魅力的なアイテムですが、デジタル以外のアナログなノウハウも結構必要で、しかも情報が少なく、やってみないとわからない事が多いです。ご不明な事がありましたら、コメント欄からご質問ください。

最後はきれいに掃除しましょう!
Tag: ノウハウ , レーザー加工機 , 自作ケース
KITAMULABO / NOTE / レーザー加工機のノウハウ

このページにコメントする

サイト全体へのご意見・ご感想はBBSからお願いします

CAPTCHA